2023年9月13日 作成

爪かみ、抜毛、皮膚むしり

(身体集中反復行動症)

 ついつい髪をいじって抜いてしまう、爪を噛んでしまう、皮膚をかきむしってしまうなどが癖になっている子どもやおとながいます。そのような癖もひどくなると、頭皮が見えたり、爪が使えなかったり、かゆみが悪化したりします。これらはDSM-5では強迫症および関連症の一種のカテゴリーに分類される身体集中反復行動症と言います。爪かみなどの癖を止めようと試してみても止められず、本人も恥や苦痛を感じたり、悪化すると皮膚の炎症等を引き起こすなど、日常生活に支障をきたす病気です。

 癖に関する対応としてエビデンスのあるものに①ハビットリバーサル(習慣逆転法)、②デカップリングがあります。

 ①の習慣逆転法は効果を実感するのが難しかった印象です。特に抜毛に対して数ケース適用してみたことはありましたが、イマイチでした。なお、ハビットリバーサルに関して興味のある方は、Douglas W. Woodsら(2018)の「チックのための包括的行動的介入(CBIT)セラピストガイド -トゥレット症とのつきあい方」が参考になります。

 簡単で誰にもできるようなものはないかと思っていた時に、こちらの論文を見つけました。Steffen Moritz他(2023)の「Self-Help Habit Replacement in Individuals With Body-Focused Repetitive Behaviors: A Proof-of-Concept Randomized Clinical Trial」です。内容は、デカップリング(分離)について実施されており、爪を噛んだり、髪を引っ張ったりする代わりに、それをしたくなった時に指先、手のひら、または腕を優しくさすりる。さらに爪かみや抜毛をしたいと感じていないときに新しい習慣を実践する。これにより、これらの癖が減少することが示されました。この方法については、Free from BFRB(https://www.free-from-bfrb.org/)をご確認ください。

 爪かみや抜毛といった癖は90%もの人に見られるため、一般的であり場合によっては役立つストレス対処となりますが、それらの行動が多すぎたり、癖によりネガティブな感情を抱いたり、皮膚症状につながったりする場合には生活に支障をきたします。そのような行動でお困りの方はカウンセラーに相談してください。

 

NPO法人SKILLSカウンセリングセンター

飯島博之(臨床心理士・公認心理師)

 

参考文献

・Steffen Moritz et.al 2023 Self-Help Habit Replacement in Individuals With Body-Focused Repetitive Behaviors: A

 Proof-of-Concept Randomized Clinical Trial JAMA Dermatol. 2023 Jul 19

・Decoupling — A Self-Help Treatment to Reduce Nail Biting, Trichotillomania, Skin Picking 2023.9.13

 https://clinical-neuropsychology.de/Technique_for_reducing_nail_biting_and_hair_pulling_trichotillomania/

・Free from BFRB 2023.9.13 https://www.free-from-bfrb.org/