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日本心理臨床学会第43回で自主シンポジウムを行いました。

9月29日に日本心理臨床学会 第43回で自主シンポジウム「トラウマインフォームドケアとスクールカウンセリング」を行いました。

視聴者数はほぼ満員となり、多くの方々が関心を持っているテーマでした。

今回、以下の内容をお二人の先生から話題提供をいただきました。

 

卜部明先生(相模原市教育委員会)

学校におけるトラウマインフォームドケア」

 

小栗正幸先生(特別支援教育ネット)

トラウマの影響に配慮すべき子どもへのカウンセリング~学校での関係性と心の距離感への配慮を中心に~」

 

 

 卜部先生は逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experiences: 以下ACEs)から、トラウマ・インフォームド・ケア(Trauma-Informed Care : 以下TIC)まで幅広く詳細に説明いただきました。

TICという名前はついていますが、亀岡(2018)はTICを「具体的なケアの方法」ではなく、ケアスタッフが「トラウマの影響を理解し関わるアプローチ」であると述べています。

「事が起きてから対処する」ではなく、「予防から対応まで」を含めた包括的なアプローチなのです。

そして、Trauma-Informed School :以下TISの概念も、そうであって欲しいと思いますが、Cole et al(2013)は「すべての生徒が安全で、歓迎され、サポートされていると感じ、学習に対するトラウマの影響に全校規模で対処することが教育的使命の中心にある学校」としています。

子どもたちを見ていると、勉強において「やる気がない」ととられがちですが、その背景にはトラウマや発達障がいの問題を抱えていることが多く、そこへの配慮なく注意されると自己否定、怒り、無気力といったことが続きます。

しかし、もし注意ではなく褒められ、励まし、配慮をしてもらえたらその子の「苦手だけどちょっとやってみよう」という気持ちも出てくるのではないでしょうか。

できると嬉しそうな子どもたちを見ると、「やる気がないから勉強ができない」ではなく「自分に合ったやり方がわからずできない」が背景にあると思います。

 

 

 

 小栗先生はユニバーサルデザインとインクルーシブの観点から、トラウマを抱えた子どもたちへのサポートについてお話してくださいました。

私には小栗先生のお話が全くその通りに思えてなりませんでした。

カウンセリングというと情緒的に深くなり、涙を流したり自分のつらかったことを話したりする状況を作りがちですが、小栗先生のご指摘するように治療に向いていない学校という場で共感、傾聴しすぎてしまい情緒的刺激を高めると、「保護された環境(相談室)」から「現実(教室)」に戻ることが困難になるのです。

だからこそ、SCはClに小栗先生のいう「サポート」である趣味などの楽しい話や頑張っていることをほめるなどをすることが、相談室と教室を安全に行き来できる工夫となり、子どもも安心して話ができるようになるのです。

 

NPO法人SKILLSカウンセリングセンター

飯島博之