アメリカ心理学会(APA:American Psychological Association)が
2023年の心理学の動向を示しています。
その内容は
①研究者はより多くの人へ科学としての心理学を
伝えるようテクノロジーを用いる。
②強力な方法で誤った情報に対処する。
③心理学研究はより包括的になる。
④心理学者のEDIにおける役割の拡大。
(EDIとは、公平性:equity、多様性:diversity、
包括性:inclusionの頭文字をとったもの)
⑤労働者の幸福が求められる。
⑥子どものメンタルヘルスを改善する努力。
⑦専門分野を超えてのパートナーシップが社会問題の解決を進める。
⑧自殺予防が新たな命綱になる。
⑨たくさんの心理学者が大学外でのキャリアを探している。
⑩ベンチャーキャピタリストはメンタルヘルスに投資を切り替える。
⑪心理学者は1対1のカウンセリングを拡大し、イメージを新しくする。
個人的にはどれも興味深いのですが、
以下、⑤、⑥、⑪に絞ってご紹介します。
⑤労働者の幸福が求められる。
これまで労働者へのストレス軽減は考え方や行動を変える、
ストレス対処法などを身につけるばかりが言われており、
会社という環境面についてあまり取り上げられませんでした。
しかし、当然ながら会社の環境において残業やハラスメント、
低賃金など個人がスキルを身につけるだけでは
どうにもならないことが多々あります。
職場環境を変えようという動きが強くなってきているのです。
心理学者も個々人のスキルだけでなく、会社の改善についても
サポートを提供し始めています。
⑥子どものメンタルヘルスを改善する努力。
日本でも不登校の増加や子どもの自殺など子どもにまつわる
メンタルヘルスの話題が日々問題となっています。
コロナにより親が失職したり、時には亡くなったりすることで
子どものメンタルヘルスが低下していいます。
コロナ下での保護者による虐待等も見られています。
また、差別やいじめも子どもたちに影響を与えています。
学校における子どものサポート体制を作っていくことは
子どもが安心して学校にいられるリソースとなります。
家庭や学校、地域でつながりを持つことが重要です。
そして、医療で言えば小児科の果たす役割は大きく、
親が快適に過ごすためのサポートが提供できます。
⑪心理学者は1対1のカウンセリングを拡大し、
イメージを新しくする。
これまでカウンセラーが提供するものは
1対1のカウンセリングというイメージがあったと
思いますが、次第に変わっていくようです。
アメリカではメンタルヘルスサービスの提供が間に合わず
どのように必要な人に必要なケアを提供するかということで
1対不特定多数の介入方法が出てきたようです。
また、メンタルヘルスのプライマリケアも出てきており、
母親へのサポートでうつや不安が減り、
子どものメンタルヘルスを守っているようです。
カウンセラーも個人レベルや対人レベルだけでなく
社会や構造の問題から相談者さんを見る
必要がありますね。
SKILLSカウンセリングセンター
飯島博之
参考文献
・APA 2023 11 emerging trends for 2023 What’s ahead for psychologists and the field?2023-1.
https://www.apa.org/monitor/2023/01/trends-report